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軽快な心持ちで夜中にこっそり筆に任せ記述する、

たまに聴きたくなる

ミキシング、マスタリングの美味しい名盤紹介。


美味しいと銘打っているのは、

私が共感覚を保持しており、

音を聴覚として捉えるだけでなく、

味覚、視覚としても同時に捉えてしまうという、

ある程度やっかいな感覚からきているからである。

さらに注意していただきたいのは、

共感覚者としての視聴を記述しているということである。

普通のレビューではなく、

これは共感覚としての体験記である。


それでは、

そのような美味しい名盤の中から一枚。


Goblinの『Roller』。

確か、76年リリースである。

私はものぐさなので

そこは面倒なので調べない。

サウンドトラックも手掛ける

プログレッシブロックバンドだ。


まずは年代からして

昨今の音圧の大きい音楽とは違い非常に繊細である。

特にLOWに関しては出過ぎず、

聴いていて疲れない。

巧みなミキシングによって

様々な楽器の音の粒子一粒一粒が素晴らしい配色なのであるが、

今回はドラムを中心に書いてみよう。


まずはドラムの中心であるバスドラだが、

何とも絶妙な固さよ。

齧れば果汁の飛び散りそうな果実のようである。

握手したい程の潔い低音のイコライジング。

40Hzの処理が手作業ながらも、

惹き込まれるような魅力をもった包丁でもってして

スッとなだらかな斜面を創っている。

この施しによって

一層奥で座り続けながらも

その存在は際立って視えるのである。


LOWの出やすいドラムのタムは、

リミッターに触れることにより、

軽く圧縮されては目の前において、

丸い波紋を広げて仲の良い兄弟のように

手を綱いで登場し、

乳白色の丸いドーナツ型の閃光を放つ。


ステレオ感も非常に気持ちの良い広がり。

お互いの音を尊重し合いながらも、

安らぎを期待させるプールサイドのイスに寝転んでみては

形状記憶させたままに自分の色を主張している。


そして何よりもスネアの音が一等好ましい。

ビスケットのほんのりとした甘い風味と

その心地の良い歯ごたえを与えてくれる。

600Hzと2400Hzと4100Hzとこの周辺がよろしい案配なのだと思う。

綺麗なダイヤモンド型に象られ、

常に意識せざるを得ない艶かしいプレイボーイとして

俯いては横目でこちらを伺う。


さてこのアルバムでの私のお気に入りは2曲目。

「Aquaman」

水の音がとても美しい光沢を放ちながら、

蒼すぎるゼラチンにも見える体を

上下左右にくねらせ、

自分の体を念入りに確認しながらゆっくりと遊び走る。

これはマスタリングとミキシングとには非常に勉強になる一曲だ。

しかしながら、この2曲目の2分07秒付近のドラムだけが、

ほんの一瞬テープを繋ぎ合わせに失敗したような音であり、

まさに拍子抜けにズレている。

ここまで音に徹底的に集中して制作されているのにも関わらず、

何故修正されなかったのかは不明であるが、

そこはご愛嬌だ。

勝手な推測をするならば、

おそらく最初にドラムを録音し、

その上に他の楽器をピンポン録音してしまい、

ドラムを再録するとなると上に重なった音も

再録しなければならず、

時間的にも予算的にも余裕がなく

元に戻すことが非常に困難になってしまったのではと推測する。

そう考えると現代のDTM世代はなんと幸せなことよ。


ごちそうさま。

以上、共感覚による筆に任せた視聴体験記である。